メカニカルキーボードの沼の深さを感じるのは、打鍵音や打鍵感、見た目など追求し始めた時です。その構成要素を探求し始めると、さらに沼が深いことを痛感します。今回はメカニカルキーボードでも最も重要なパーツ、キースイッチについて解説していきます。好みのキースイッチを探す旅をしているが、なかなか見つからない、そもそもどんなことを気にすれば良いか分からない!という方にぜひ読んでいただきたい記事になります。
そもそもキースイッチとは?
各キーの下に配置されており、キーを押した際の感触や音、反応速度などを決定する重要な部品です。メンブレンキーボードと違い、個々のキーが独立したスイッチで構成されています。
キースイッチの種類
メカニカルキーボードのキースイッチも星の数ほどありますが、大きく3種類に分けることができます。
スイッチ | 詳細 | 例 |
リニアスイッチ (Linear Switches) | キーを押すと、押し下げる動作がスムーズで、一貫した抵抗があります。クリック感や触感のフィードバックはありません。 | Cherry MX Red、CIY NARAKA、AKKO Cream Yellow Pro V3、Maestro from SWAGKEY |
タクタイルスイッチ (Tactile Switches) | キーを押すと、中間点で触覚的なバンプ(抵抗の変化)が感じられます。これはキーがアクチュエーションポイント(信号が送信されるポイント)に達したことを示します。 | Cherry MX Brown、Gateron G Pro Brown |
クリッキースイッチ (Clicky Switches) | キーを押すと、タクタイルスイッチのように触覚的なフィードバックがあり、さらにアクチュエーションポイントでクリック音が鳴ります。 | Cherry MX Blue、Gateron G Pro Blue |
キースイッチのスペック
それでは、上記の大きな種類はご理解いただいた上で、さらに細かくスペックを見ていくにはどのような点に注意すれば良いか詳細に紹介していきます。
アクチュエーションポイント (Actuation Point)/オペレーティングポジション(Operating Position)
入力の検知は、アクチュエーションポイント×アクチュエーションフォースで決まります。
キーが押されたときにスイッチが作動し、信号が送信されるポイントをアクチュエーションポイント、またはオペレーションポジションと呼びます。通常、キーの押下量(mm)で表されます。
特にゲームを利用される方に注目される点です。アクチュエーションポイントが浅い(mm数が小さい)と少しの打鍵で反応し、反対に深く(mm数が大きい)と押し込まないと反応しません。高速でタイピングしたり、スピードを求められる方はアクチュエーションポイントが浅いスイッチを購入したり、キーごとにアクチュエーションポイントが違うキースイッチを割り当てたりすることもできます。
プリトラベル (Pre-Travel):
アクチュエーションポイントまでの距離。キーが反応するまでにどれだけ押さなければならないかを示します。
トラベルディスタンス (Travel Distance) /トータルトラベル(Total Travel)
キーを完全に押し下げたときの総移動距離。通常、ミリメートル(mm)で表されます。アクチュエーションポイントも鑑みた上で、最終到達点が何ミリになるかでキーボードの体験が変わります。いずれにせよミリ単位ですが、感覚的に好き好きが分かれるポイントです。
アクチュエーションフォース (Actuation Force)
スイッチを作動させるために必要な力。通常、グラム(g)で表されます。軽いタッチでタイピングしたいか、重くずっしりしたタイピングを楽しみたいか、好みによってわかれると思います。私は45g〜55gあたりが好みです。
フィードバック(Feedback)
指で受ける感触(反応)のことです。それぞれのスイッチタイプによってことなるので、画像引用ともに解説していきます。
以下表の読み方、画像はARCHISITEより引用しております。
縦軸:force[cN] → 押す力(1cN[センチニュートン]は、ほぼ1g)
横軸:travel[mm] → キー位置(押しこんだ距離)
赤線:入力(行き)のグラフ
黒線:離す時(帰り)のグラフ
グラフの傾き:キーの反発力(傾きがきついほど、反発力が強く、重いと言われる)
Operating position → スイッチが入る(ONになる)位置
Reset position → スイッチが離される(リリースされる)位置
Tactile position → クリック感の位置(タクタイルスイッチのみ)
引用:ARCHISITE
リニアフィードバック (Linear Feedback)
リニアスイッチの特性で、押下時に一貫した抵抗があるもの。リニアは「直線」という意味があり、この抵抗をグラフで表した時にトラベルディスタンスと押下力(フォース)の関係が一直線になります。抵抗なく滑らな打鍵を体感することができできます。
タクタイルフィードバック (Tactile Feedback)
タクタイルスイッチに特有の、中間点で感じられる抵抗の変化。触覚的なバンプとも呼ばれます。アクチュエーションポイント(Operating Position)の手前から少し重みが増してくるので、スイッチを押している感覚が強くなります。
クリックフィードバック (Click Feedback)
クリックスイッチに特有の、アクチュエーションポイント(Operating Position)で発生するクリック音。マウスのクリックをしているような、「カチ」という音がするのが特徴です。
リセットポイント (Reset Point)/ リセットポジション(Reset Position)
キーがリリースされたときにスイッチがリセットされるポイント。通常、アクチュエーションポイントより少し上に位置します。ほとんど気にすることはありませんが、アクチュエーションポイント付近で高速連打したい方には気になるポイントかもしれません。
バウンスタイム (Debounce Time)
スイッチが押された後に、信号が安定するまでの時間。通常、ミリ秒(ms)で表されます。日常使いをする場合は、ほとんど気にしたことはありません。
ライフスパン (Lifespan)
スイッチが正常に動作する保証回数。通常、何千万回の押下回数で表されます。
キースイッチの構造
キースイッチは主に以下のパーツによって構成されています。キースイッチによってそれぞれことなるので、ここもキーボード沼のポイントです。
パーツごとの名称
ハウジング(Top housing/Bottom housing)
スイッチ本体を側を構成する部品。トップハウジングとボトムハウジングに分かれ、透明なものから、カラフルなものまでカラーバリエーションもさまざまです。主にプラスチック素材が使用されており、その種類によって打鍵音や打鍵感が大きく変化します。
ステム(Stem)
キーの中心にある上下に動くパーツ。キーキャップを取り付けるパーツになります。多くのメカニカルキーボードはCherry社のCherry MX軸が採用されており十文字の形をしています。ステムの形状や素材によって、打鍵音や打鍵感が変わります。
スプリング(Spring)
ステムの下にあり、押下後にステムを押し戻す役割を担っています。スプリング(バネ)の長さや硬さ、形状によって打鍵感が変わります。バネ一本の場合をシングルステージ、2本を上下に組み合わせた場合をダブルステージ、さらに3本重ねにしたものをトリプルステージと言います。
ピン(Pin)
PCBとスイッチを固定するためのピンと電気信号を送るためのピンの2種類が付いています。主に3ピンと5ピンに別れ、5ピンの方が安定性が高く、キースイッチのブレが少なくなるとされています。
ルブ(Lube/潤滑剤)
パーツそのものではありませんが、打鍵感や打鍵音に大きな影響を与えるので言及しておきます。ルブはステムとハウジングの擦れを滑らかにするために塗布されるもので、キースイッチ以外にも長いキーキャップ(スペースキーやエンターキー)などを安定させるスタビライザーにも塗布したりもします。生産段階でルブされているキースイッチも多くありますし、追加でご自身で塗布することも可能です。
キースイッチの素材
主にハウジングとステムの部分を形成する素材が何であるかで、打鍵感や打鍵感が大きく異なってきます。ナイロンやポリカーボネート、POMが代表的な素材ですが、そのほかにも多彩なプラスチックがキースイッチには採用います。パーツごとの素材の違いが打鍵感の個性を生み出しています。
代表的なブランド(メーカー)
以下、キースイッチを扱っている代表的なブランドを紹介していきます。
Cherry
ドイツの元祖メカニカルキーボード企業。世界で最初にメカニカルキーボードのスイッチを開発した企業です。その名前は、キースイッチの軸の名前(Cherry MX)やキーキャップのプロファイル名(Cherry Profile)になり、広く汎用的にその名前が知られております。
GATERON
中国のメーカーでCherry社との互換性のあるスイッチを製造しております。様々なキーボードメーカーともコラボレーションし、多くのキースイッチを世に生み出しています。
Kaihl
台湾のメーカーで、Cherry社の特許が切れた後に登場した新しいスイッチを製造しています。Kailh社独自のスイッチもバリエーションが豊富です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?お気に入りのキースイッチを探すのもキーボード沼の一つに醍醐味です。どんなタイプがあり、どんなパーツで構成されているのか解説してきました。本当に奥が深いのでまた新しい知識を得ましたら、この記事もアップデートしていきたいと思います。ではまた!
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